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JAPAN 国際税務 移転価格
移転価格リスクと向き合う⑮
中堅企業の移転価格文書化対策その3 ~国税庁が移転価格文書の例示や様式・記載要領、事務運営指針等を公表(H.28税制改正)
2016.08.04
国税庁は、2016年(平成28年)6月30日に、移転価格文書の例示や様式・記載要領をHP上で公表しました。また、同年7月5日には、移転価格税制に係る事務運営指針を公表しています。
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移転価格文書の例示や様式・記載要領
国税庁はHPの「多国籍企業情報の報告」のページで、下記のような、移転価格文書の例示や様式・記載要領を公表しました。
- 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし(平成28年6月)
- 独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)作成にあたっての例示集(平成28年6月)
- 特定多国籍企業グループに係る最終親会社等届出事項兼最終親会社等届出事項・国別報告事項・事業概況報告事項の提供義務者が複数ある場合における代表提供者に係る事項等の提供
- 特定多国籍企業グループに係る国別報告事項(CbCレポート)
- 特定多国籍企業グループに係る国別報告事項表1から表3
- 特定多国籍企業グループに係る事業概況報告事項(マスターファイル)
1. 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし(平成28年6月)(国税庁パンフレット)
これは、OECDのBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの勧告(行動13「多国籍企業情報の文書化」(注)を踏まえ、平成28年度税制改正により租税特別措置法の一部が改正され整備された、移転価格税制に係る文書化制度についてまとめたものです。
(注)行動13は、BEPS最終報告書公表以前は、「移転価格関連の文書化の再検討」という名称でしたが、最終報告書公表後はこのように変わっています。
2. 独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)作成にあたっての例示集(平成28年6月)
2017年4月1日以後に開始する事業年度から、確定申告書の提出期限までに、ローカルファイルを作成又は取得し、保存することが義務付けられました。②は、ローカルファイルに該当する書類の具体例です。
当該例示集は移転価格税制に係る通達や事務運営指針の一部ではなく、納税者が自らローカルファイルを作成する際の「参考資料」という位置づけです。具体的には、規則第22条の10 第1項の、「国外関連取引の内容を記載した書類」(1号イ~リ)、及び、「国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類」(同項イ~ホ)のそれぞれにつき、【説明】、【必要な情報の例】、【準備する書類】が記載されています。
3~6. その他の報告事項等の様式・記載要領
これらは、各々の届出事項、または、報告事項の様式・記載要領です。CbCレポートやマスターファイルに関しては、2016年3月の改正法案が可決した段階では、その記載項目は「OECD移転価格ガイドライン第5章改定案の記載項目と同様」とされていました。今回、具体的な記載項目の定義について詳細な説明が行われ、内容が明確となりました。
上記、「多国籍企業情報の報告」ページのリンクは以下のとおりです。
(国税庁HP ホーム/調達・その他の情報/多国籍企業情報の報告/)
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移転価格税制に係る事務運営指針
国税庁が、このたび公表した移転価格税制に係る事務運営指針は以下の通りです。
- 「移転価格事務運営要領の一部改正について」(事務運営指針)(平成28年6月28日付査調9-113ほか3課共同)
- 「連結法人に係る移転価格事務運営要領の一部改正について」(事務運営指針)(平成28年6月28日付査調9-114ほか3課共同)
1. 「移転価格事務運営要領の一部改正について」(事務運営指針)
当該一部改正では、以下の4つの指針が新設されています。
・ 国別報告事項の適切な使用
・ 国別報告事項及び事業概況報告事項の訂正等
・ 国別報告事項に相当する情報に誤り等がある場合
・ ローカルファイル
「移転価格事務運営要領の一部改正について」(事務運営指針)(平成28年6月28日付査調9-113ほか3課共同)
2. 「連結法人に係る移転価格事務運営要領の一部改正について」(事務運営指針)
当該、一部改正では、納税者が移転価格の算定方法等の事前確認を行った場合に、その内容に適合した申告を行っていることの説明等を記載した、「独立企業間価格の算定方法等の確認に関する報告書」の提出を求めるという指針を新設しています。
「連結法人に係る移転価格事務運営要領の一部改正について」(事務運営指針)(平成28年6月28日付査調9-114ほか3課共同)
今回の国税庁の移転価格文書の例示や様式・記載要領、及び、移転価格税制に係る事務運営指針の公表で、文書化を実際行う上で、多くの疑問が解決したと言えるでしょう。国外関連者との間で取引を行う企業は、これを契機に、移転価格文書化作業を推し進めて行くことをお勧めします。
以上