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CHINA 海外派遣社員 源泉課税
【CHINA】中国駐在員に対する退職一時金問題について
2024.07.11
※ 本ブログはBUSINESS PARTNER株式会社BPアジアコンサルティング の原稿提供により掲載しております。
往来制限解除もすっかり定着し、駐在員の皆様も忙しく中国で業務に励んでおられると思います。
このような中、中国駐在中に日本本社の定年(役職定年も含む)を迎え、日本本社から退職一時金を受ける方も増えて参りました。
この場合、当該退職一時金に対する中国個人所得税が問題となります。特に退職一時金は一般に多額で、且つ日本の所得税控除額も大きいため、中国で申告納税すると税負担が大きくなるのでは、との疑問がわきます。
実はこの課税関係は非常に複雑であるため、今回これを整理・解説したいと思います。
まず中国駐在員が中国で居住者・非居住者になるのかを整理します。
駐在員=中国居住者と考えがちですが、居住者は暦年で183日超中国に滞在しているかで判定されますので、例えば1~6月中に日本帰国(その後日本本社で退職・退職一時金支給)すると、その年度は中国非居住者になります。
中国非居住者の場合、国外機構(=日本本社)が負担する所得に中国の課税権はないため、日本本社支給の退職一時金に中国課税は及びません。
一方居住者となる場合、つまり7月以降も中国に駐在されている場合を考えます。
ここで気を付けるのは、中国滞在中に退職一時金を受けるのか、それとも日本に帰任し、その後退職・一時金支給を受けるのかで処理が変わってまいります。
前者は単に中国居住者が得る中国源泉所得であり、当然ながら中国個人所得税課税対象になります。
一方後者は、中国個人所得税の課税額(月次)が、中国滞在日数を分子(分母は総勤務日数)として計算する為、例えば8月末で日本帰国し9月末に退職・一時金支給を受けた場合、9月の中国滞在日数はゼロなので、退職一時金があっても結果税額はゼロとなります。
つまり退職・一時金支給を受ける月は中国から完全に帰国していることが大きなポイントになります。
とはいえ、業務の都合により帰国できない方もいらっしゃるでしょう。
その場合中国課税が発生しますがどのように計算するのでしょうか。
ここで、日本退職一時金に対する中国個人所得税は、中国経済補償金に準じて税額計算する(中国当地の平均月給の3倍の基礎控除が可能 注1 )、とし、事実そのような処理をした事例も存在します。
確かに退職一時金は経済補償金と似てはいますが、中国国内法且つ中国企業を対象とした経済補償金と、日本本社が支給する退職一時金を同列で扱うのは法制度から矛盾しており、あくまで一つの運用事例として見るべきものと思われます。
また退職一時金を中国勤務期間/全勤務期間で除して納税計算をした事例もあります。
これは、日中租税条約18条にて「退職年金その他これに類する報酬」は居住国に課税権があると定めているのですが、ここでいう「類する報酬」に退職一時金は該当しないとし、中国勤務期間部分は中国課税対象であるとした通知 注2 を根拠にしています。
しかし一方で中国当局の条文解釈 注3 では、退職一時金は租税条約に定める退職所得等に該当する、とも言っており、両者内容は矛盾しています。
以上は実際に運用されている納税実務事例としてあるものの、これらが制度として明確に定められた納税方法であるとは言いきれないことに留意が必要です。
上記の通り退職一時金問題は複雑でありますが、上述以外にも、
・例えば日本で退職・退職一時金の支給を受けたあと、また中国に再赴任したらどうなるのか?
・各ケースにおいて日本ではどのような扱い、処理が必要となるのか?
・更には日中双方居住者となる場合どうなるのか?
等の問題もあります。これらはまた別の機会にご説明をしたいと思います。
注1 個人所得税法修正後の優遇政策に係る引継問題に関する通知(財税2018-164)
注2 国外雇用主が従業員に支払う退職金の個人所得税徴収問題に関する返答(国税外函1998-21)
注3 中国政府とシンガポール政府の所得に関する二重課税の回避及び脱税防止のための租税協定及び協定書の条文解釈(国税発2010-75)
以 上
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