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CHINA 海外子会社管理
【CHINA】会社清算における資金調達の方法と最近の動向について
2025.04.08
※ 本ブログはBUSINESS PARTNER株式会社BPアジアコンサルティング の原稿提供により掲載しております。
トランプ政権による関税政策に対し、中国も報復関税を表明し、世界的な経済情勢・サプライチェーンが混沌としております。
そのような中、中国拠点の整理・清算を検討している日本企業も増えてきております。
確かに中国での会社清算は多方面の対応ポイントがあり、どれをとっても(例えば人員整理など)タフ・ハードな対応が求められます。
その中でも今回は事前に計画・スケジュールしておかなければならないという点で重要な資金調達にスポットを当てたいと思います。
一般にカネが無ければ清算もできない、と言われます。中国でも清算中の運転資金や人員整理時の経済補償金(=日本の退職金に相当)などのまとまった資金が必要です。これに対し、清算中の企業では資金調達の方法に各種制限が発生します。これをいくつかのケースで解説します。
(注:日本の感覚であれば立替金や仮払金などで都度資金供給すればよいのでは、と思われますが、中国の外貨管理上、自由に立替金・仮払金を送金できません。)
1. 増資による方法:
最も一般的・合理的資金調達方法でありますが以下のデメリットがあります。
-
- 増資の行政手続の手間や時間がかかる
- 原則清算期間中の会社は増資ができない
2. 親子ローン(外債借入)による方法:
これも一般的・合理的な資金調達方法ですが、増資と同様行政手続の手間、原則清算期間中の会社は外債登記ができない問題の他、親子ローンを最終的に債務免除処理した際の企業所得税課税問題もあります。
(注:更には投注差等による借入枠制限や外債借入口座開設の手間もあります。)
その他の方法として、輸出前受金による方法も考えられます。
確かにこれであれば行政手続は不要で時間もかかりませんが、資金送金目的が実態に即しておらず外貨管理上の問題や、税務上収益認識されるリスクがあり、現実的ではありません。
また、現地法人の各種支払先(一般経費や従業員給与等)に、日本本社が直接支払をする、という方法も考えられますが、中国国内企業や中国人個人が直接取引先でもない外国企業から外貨送金を受ける、というのは現実的ではありません。
以上から、清算期間中にどの程度の資金が必要かを事前にシミュレーションし、不足がある場合は増資により資金供給をするのが現実的・合理的対応と考えられます。
ここで、清算手続開始後に増資はできないのか、という声をお聞きします。中国当局としても、例えば経済補償金の支払資金不足などの現実的状況から、清算開始後の増資を容認した事例はあります。しかしその説明や資料提出などは相当煩雑でありますし、必ず容認されるとも限りません。やはり清算開始前に増資を完了しておくのが得策です。
また一方で、会社清算時に日本本社への支払債務(輸入買掛金や親子ローンなど)を債務免除処理(注)しようとした際に、当局から「増資により資金調達をし、その資金をもって日本本社に支払処理するよう」要請される事例もありました。
(注:税務欠損の枠内のため、債務免除益から課税所得は発生しない状況です)
これは中国当局が外貨安定化行動計画を発表(2025年)し、投資誘致を推進していることが背景と推察されます。たとえ清算企業であっても増資がなされればそれが当局の投資誘致実績にカウントされるためでしょう。
この事例では、債務免除処理をすれば資金は事足りたのですが、当局要請により資金注入が必要となったケースとなります。
弊社ではこれら会社清算における事前の各種検討や、清算における行政手続、社員解雇問題対応など一連のサポートをしております。
不明点ございましたらいつでもお問い合わせください。
以 上
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