タ イ ・インドネシア・フィリピンの会計・税務

LIBRARY

INDONESIA 会計・税務 国・地域情報 税制改正 

【規則改定・インドネシア】給与にかかる月次源泉徴収(PPH21)の計算方法の改定

2024.01.16

 2023年12月27日付 政令No.58 / 2023(以下“政令58号“)、および2023年12月29日付 財務大臣令No.168 / 2023が公布され、給与にかかる月次源泉徴収(PPH 21)の計算方法について税務上の改正がありましたので、お知らせします。

 当該改正の趣旨は、従来煩雑であった月次源泉徴収税の計算の簡易化が目的とされています。
具体的には源泉徴収税率(Tarif Efektuf Rata-Rata “TER”)が設定され、12月度を除く期中の源泉徴収税についてはTER税率を適用した源泉税納付が求められます。

 12月度の源泉徴収税額がそれまでの月次源泉税額と比較して多額(ないしは少額)となるケースが想定され、従業員より問い合わせを受ける可能性もありますので、従業員に対する事前の周知をいただけますようお願い致します。

 改正の主な内容は下記のとおりです。

・  2024年1月度より本規定に従った月次源泉徴収が必要となります。
・  月次源泉徴収税額は月給等にTERを乗じて計算します。
・  12月度には年間の確定所得に基づく年間税額を計算し、ここから期中の月次の源泉徴収総額を差し引いて12月度の源泉徴収額を計算します。(現行の年末調整と同じ手順)

源泉徴収税率(TER)
 従業員の家族構成および月次給与額に応じた源泉徴収税率(TER)が公表されました。
 月給はそれぞれの家族構成によるA、B、Cのカテゴリー(各々最大44段階の0%〜34%までの税率)および日給のカテゴリーの税率が規定されています。
 具体的な月給額や税率については政令58号をご確認ください。

【月給】
カテゴリーA :未婚で扶養家族なし(TK/0)、未婚で扶養家族1人(TK/1)、既婚で扶養家族なし(K/0)
カテゴリーB :未婚で扶養家族2人(TK/2)、未婚で扶養家族3人(TK/3)、既婚で扶養家族1人(K/1) 、既婚で扶養家族2人(K/2)
カテゴリーC :既婚で扶養家族3人(K/3)

【日給】
カテゴリーD :日雇い雇用
※家族構成の判断時点は年度開始時となります。(駐在員が新たに赴任した場合には着任時のステータスを利用します。)

月次での源泉税の計算方法

【正社員 (役員等含む) 給与の所得税計算】

  • 月次ではTERを利用した源泉税の計算を行います。

    (例)未婚で扶養家族なし、従業員へ月給総額(グロス)10,000,000ルピアの給与支給を行う場合、TERは2% (*)と設定されています。従って月次源泉税額は200,000ルピア(**)、従業員への給与振込額は当該源泉税を差し引いた9,800,000ルピアとなります。
    (*) 政令58号のカテゴリーAにより 9,650,000ルピア~10,050,000ルピアのレンジに該当
    (**)月次源泉税額200,000ルピア  = 月給 10,000,000ルピア×TER 2%

・期中入社の従業員に対しては、月次ではTERを利用した源泉税の計算を行い、12月度に年末調整を行います。(入社年度における年末調整の結果、12月の源泉税が大きく減額または全額還付となる従業員が多いものと想定されます)

・グロスアップ(手取保証)条件で給与を支給する場合、給与手取額ではなく税金手当考慮後の給与額面を基準としたTERを適用することになります。

・期中退職した従業員に対しては、退職月に年末調整を行います。

【非正規社員給与の所得税計算】

  • 月次ではカテゴリーA~CのTERを利用した源泉税額の計算を行います。
  • 日当払いの条件で、その日当額が2,500,000ルピア/日以下の場合は、カテゴリーDのTERを利用した源泉税額の計算を行います。
  • 日当払いの条件で、その日当額が2,500,000ルピア/日以下の場合は、日当の50%を課税所得とみなしての所得税法17条1- aに従った源泉税額計算が必要です。(TERを利用した源泉税の計算は行いません。)
  • 月給払いの条件の場合には、カテゴリーA~CのTERを利用した源泉税の計算を行います。

【フリーランス(個人事業主)給与の所得税計算】

  • 従前どおり、月次報酬額の50%を課税所得とみなしての所得税法17条1- aに従った源泉税計算が必要です。(TERを利用した源泉税の計算は行いません。)
    ※従前はフリーランスへの継続的な報酬の支給に際しては年間報酬額を考慮した累積的な計算が要請されていましたが、本改正により累積的な計算は求められないこととなりました。

【非居住者給与の所得税計算】

  • 従前どおり、PPH26の対象となり、原則20%の源泉税が必要です。(日尼租税条約の適用を受ける場合には10%の軽減税率の適用が可能)


 以上は執筆時点(2024年1月12日時点)の情報に基づいて作成していますが、適時変更される可能性がありますので、実際の税務対応については個別にご相談ください。

 

以上