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OECD BEPSプロジェクトの最終レポートを公表 2015年10月
2015.10.16
2015年10月5日、経済協力開発機構(OECD)はBEPSプロジェクト(*1)に係る最終パッケージを公表しました。同8日には、日米欧に中国などを加えた20カ国・地域(G20)がこれを承認しました。
BEPSプロジェクトは、2012年の6月にOECDが不当な租税回避戦略を可能にしている既存の国際租税制度の隙間を塞ぐための解決策を各国政府に提示するために立ち上げたものです。2013年7月には、15の「BEPS行動計画」(*2)を掲げ、それぞれについて検討を重ねてきました。
今回はそれぞれの行動計画につき「2015年最終レポート」が作成され、「最終パッケージ」として公表されました。
当該最終パッケージには、下記のような内容に係る新たなミニマム・スタンダードが含まれています。
・国別報告・・・税務当局に初めて多国籍企業のグローバルな事業の全体像をもたらす
・条約漁り・・・投資チャネルとして導管会社を利用することに終止符を打つ
・有害な税慣行の抑制・・・特に知的財産分野における抑制やルーリングの自動的交換を通じた抑制
・効果的な相互協議手続き・・・二重非課税の防止が結果的に二重課税を生じさせないようにする
また、最終パッケージは、以下のような内容を含んでいます。
・移転価格ルールの適用に関する指針の改定
・納税者がいわゆる「キャッシュボックス」事業体を利用して無税または低税率の国・地域に利益を避難させることができないようにす/
・恒久的施設(PE)の基本概念を再定義し、従来の定義の下で課税対象となる存在の創出を回避してきた取決めを抑止
さらに同パッケージは、国内法の改正を通じて実施される一連の新たな措置を各国政府に提供します。
・外国子会社合算税制(CFC)に関するルールの強化
・利子控除を通じた税源浸食を制限する共通のアプローチ
・ハイブリッド・ミスマッチ取決めが複雑な金融商品を利用して税務上の利益を消失させることができないようにするための新たなルール
以上のような当該最終パッケージにおける各国政府に対する勧告の中には、国際税務や租税条約にドラスティックな変革をもたらす可能性があるものが含まれています。
同勧告は、国際規範ではあるものの法的拘束力はありません。したがって、各国が当該勧告に従い実際に国内税法の整備を行うかどうかがBEPSプロジェクト成功の鍵といえます。
日本では早いものは、平成28年税制改正で適用されるものと予想されます。今後の日本、及び、各国の国内税法改正の動きが注目されます。
(*1)BEPS(Base Erosion and Profit Shifting: 税源浸食と所得移転)とは、国際的な税制の隙間や抜け穴を不当に利用した租税回避戦略を言います。
(*2)15のBEPS行動計画:
①電子商取引課税、②ハイブリッド・ミスマッチ取決めの効果否認、③外国子会社合算税制の強化、④利子等の損金算入を通じた税源浸食の制限、⑤有害税制への対抗、⑥租税条約乱用の防止、⑦恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止、⑧移転価格税制(無形資産)、⑨移転価格税制(リスクと資本)、⑩移転価格税制(他の租税回避の可能性が高い取引)、⑪BEPSの規模や経済的効果の指標を政府からOECDに集約し、分析する方法を策定する、⑫タックス・プランニングの報告義務、⑬移転価格関連の文書化の再検討、⑭相互協議の効果的実施、⑮多国間協定の開発
以上