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どうしたら「利益を出し続ける」会社になれるのか
第12回 変化しない

2017.08.10

最後のテーマは「変化しない会社」です。

日本には歴史の古い会社が多く存在します。日本で一番古い会社は、「金剛組」という世界最長の建設会社で、創業がなんと西暦578年といいますから、1400年以上続いていることになります。一方で、10年以上会社が続く生存率は約70%(帝国データバンクのデータより)、一説にはそれほど高くなくて10%程度だという人もいるのですから、これほど会社が長く続いていることは驚きです。

またそれほどでなくても、我々の身近にはいわゆる「老舗」が珍しくありません。テレビで老舗の食べ物屋さんに、「長く続くコツは何ですか?」と尋ねると、「手間暇や味を変えないことです」と答えている場面を度々見かけます。

ここでは「変化しないこと」が老舗を長続きさせる「コツ」だと言っているのですが、それは全ての会社に当てあてはまるのでしょうか?

多くの会社を見てきて、会社はいつも複数の「波」に晒されていることを感じています。その波には、世界、国の景気といった「広範囲の波」。業種特有の「中範囲の波」。会社特有の「波」の3種類があるように思います。例えば日本の景気は統計数字だけを見る限りでは、悪くありません。ですがその景気の恩恵を受けられずに苦しんでいる業種もあります。また国の景気や業種の景気が悪いときに最高益を更新する会社もあります。

こうしたいろいろな「波」に絶えず揺らされるため、永遠に成長し続ける会社はありません。どんな会社にも「良い時」と「悪い時」は存在します。

ここで重要なことは「良い時」であっても「悪い時」に備えること、また「悪い時」の乗り切り方です。悪くなる原因はいろいろ考えられます。景気が悪くなって、消費が落ち込んでいる。購買ルートがネットに変化して、既存店舗だけでは売上げが減少するのみである。主要顧客先を失った・・・・・。ただこうしたことは表面上の理由であって、多くの場合、その本質は「自社」が周りの環境やニーズに合っていないことにあるのではないでしょうか。

ここで今回のテーマである「変わる」ということが重要になってきます。自社を巡る周辺の環境は波の動きのように絶えず変化しています。この変化に対応できなくなったとき、自社の業績は悪くなるのですから、自社もその変化に対応して変化させていくことが必要です。

ここで「変化する」ことについて、3つのポイントがあるように思います。

まず一つは、何を変えなくてはならないかを冷静に分析することです。

人は行動する中で、何事にも慣れてきます。慣れることは決して悪いことではありません。「慣れる」=「経験」であり、それがあるからこそ、行動は正確になりますし、スピードも速くなります。例えば切符を買う際にも、券売機のどこにお金を入れて、どのボタンを押せば良いのかを経験でわかっているため、早く正確にそれを行うことができます。

ただ全く新しい券売機の前ではどうでしょうか?

私は時々海外に行きますが、海外で切符を買う際、どうすれば良いのか分からないため、時間はかかりますし、時には操作を誤ります。

さらになまじ成功体験があると、事はさらに厄介です。券売機が変わっているのに、それに気づかずに前と同じ方法をいくら試してみても、永遠に切符を買うことはできません。

うまくいっていない多くの会社ではそれと同じことが起きているような気がします。今までうまく行っていたことが急にできなくなると、誰もが慌てます。この原因の多くは相手が変わっているのに、それに気づかないことにあります。まずは券売機がどのように変わったのか、またどうすれば切符を買うことができるのかを冷静に分析することが重要です。

二番目は、「変えなくてはならないこと」と同時に、「変えてはならないこと」を考えることです。

例えばこのコラム3回目に書いた「正義を持つこと」、これは変えてはならないことの一つです。会社の軸となる経営理念や社是といったものを頻繁に変えてしまうと、多くの場合に会社は求心力を失います。

また消費者の動向に合わせすぎて、自社の個性を無くすような変化をしていると、重要顧客を失うばかりか最終的には消費者の多くに飽きられてしまい、かえって事態が悪化することもあります。

最後は周囲の変化に対して、「組織としてどのように対応するか」です。

一人が会社を変化させようとしても、結果として多くが動かなければ全体は変わりません。

またあまりに大きな変化を経営者が急に起こしても、従業員がそれについていけない場合もあります。多くの従業員をどのように「変化すること」に巻き込んでいくのか。このことは重要なテーマです。

このコラムでは、私なりに、どうしたら「利益を出し続ける」会社になれるのかを考えてきました。もしこのコラムが皆さんの会社の業績に、少しでもお役に立てれば本当にうれしく思います。

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。

以 上